コラムvol.15【介助犬という呼び名について】

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介助犬という呼び名は正しいのか?

最近、ちょっと驚いたことがありました。
それは、「介助犬」という言葉が、法的には誰でも自由に使えてしまう、という事実です。

え?と思った方、けっこう多いのではないでしょうか。実は私もその一人でした。
というのも、私たちは厚生労働大臣から指定を受けた法人として、「身体障害者補助犬法」に基づき正式な介助犬を育成・認定している団体です。日々、訓練を重ね、厳しい審査を経てようやく“介助犬”として社会に送り出しています。

だからこそ、「うちの犬も介助犬です」と、特別な認定もなく名乗られてしまうと…正直なところ、戸惑ってしまいます。
例えば、飲食店や公共交通機関で、きちんと認定を受けた介助犬と、そうでない犬とが同じように扱われてしまったら、どうなるでしょう?

さらに言えば、

あるお店で介助犬(非認定)を連れた人が店内でなんらかのトラブルを起こしたとします。事情をよく知らない人からすれば、「こんな介助犬ユーザーもいるんだ。介助犬って嫌だなぁ」と思ってしまうかもしれません。その結果、本来の認定介助犬とユーザーさんが同じように見られてしまい、誤解や戸惑いが生じることもあるのです。もしそんなことになったら、本当に必要としている障がいのある方と、そのパートナーである介助犬が入店を拒否されるかもしれません。

これは認定介助犬にとっても、ユーザーさんにとっても、非常に深刻な問題です。

そもそも「介助犬」とは、身体障害者補助犬法で定められた認定を受けた犬のことを指すはずなのですが、どうやら「呼称」自体には法的な制限がないようです。つまり、認定を受けていなくても「うちの子は介助犬です」と名乗ることは“違法ではない”んですね。

これはちょっとした盲点でした。

では、どうしたらいいのでしょう?

私たちがいま考えているのが、「認定介助犬」あるいは「介助補助犬」という新しい呼び名です。
こういった名称で、法的な認定を受けている介助犬であることを明確に区別できれば、ユーザーさんが社会の中で不当な扱いを受けるリスクも減らせるのではないかと考えています。

もちろん、本質的には“名称”の問題ではありません。
一番大切なのは、「どんな犬が、どんなトレーニングを受け、どのような目的で活動しているか」を、社会全体が正しく理解すること。そして、障がいのある方が安心して介助犬とともに生活できる環境を整えることです。

でも、だからこそ「言葉」は重要です。言葉が、誤解を生んだり、信頼を築いたりするきっかけになるからです。

今後、私たちは「認定介助犬」や「介助補助犬」という呼称の普及も視野に入れながら、引き続き正しく信頼される介助犬の育成・認定活動に取り組んでいきたいと思っています。

皆さんも、街で介助犬を見かけたら「この子は認定されている子かな?」と、ちょっと気にして見てみてくださいね。そして、どうか応援の気持ちを持って接していただけたら嬉しいです。

投稿者:川崎元広